—— 本当にそうでしょうか?
「土地が小さくても、暮らしは小さくならない」
家づくりの現場にいる私自身、
この言葉をよく使いますし、
実際にそう感じているお客様もたくさんいらっしゃいます。
でも、ここで一度、
あえて立ち止まって考えてみたいと思います。
本当に、そうでしょうか?
正直に言うと、向かないケースもあります
まず結論から言うと、
狭小地がすべての人に向いているわけではありません。
・とにかく広さを重視したい
・ワンフロアで生活を完結させたい
・上下階の移動がストレスになる
・物量が多く、収納量を最優先したい
こうした価値観が強い場合、
狭小地での暮らしは
「やっぱり無理があった」と感じる可能性もあります。
つまり、
土地が小さくても暮らしが小さくならない、は
条件付きの話です。
それでも「成立する」と言える理由
ではなぜ、
それでも私たちは
「狭小地でも、快適な暮らしはつくれる」
と言い続けているのか。
それは、
暮らしやすさは、面積だけで決まらない
という場面を、
何度も見てきたからです。
狭小地でうまくいっている家には、
いくつか共通点があります。
狭小地で“後悔しにくい家”の考え方
うまくいっているケースほど、
最初から「広さ」を追いかけていません。
代わりに大切にしているのは、
・視線の抜け
・天井の高さの使い方
・光の取り入れ方
・空間のつながり
・暮らしの動線
つまり、
数字ではなく、体感です。
同じ大きさでも、
圧迫感のある家と、
不思議と落ち着く家がある。
その差は、
設計の考え方にあります。
土地選びでも「本当に見るべきところ」
狭小地という言葉だけで
「やめた方がいい土地」と
判断してしまうのは、少し早いかもしれません。
見るべきなのは、
土地の大きさよりも、
その土地が持っている環境です。
・周囲の建物との距離
・高さ関係
・窓の位置
・前面道路の状況
これらによって、
同じように見える土地でも、
住み心地は大きく変わります。
「形が整っていない=悪い土地」
ではありません。
どう使えるかが想像できるかどうか。
そこが大切です。
狭小地は、設計力と相性がはっきり出る
もう一つ、
大切なことを正直にお伝えすると、
狭小地の家づくりは、
誰が設計しても同じ結果になるものではありません。
制限が多いからこそ、
・法規の理解
・空間の引き出し
・施工との連携
こうした力が、
そのまま住み心地に表れます。
「狭小地だから仕方ない」
で終わる家と、
「この土地だから、こうなった」
と言える家。
ここには、
はっきりと差があります。
最後に
「土地が小さくても、暮らしは小さくならない」
この言葉は、
誰にでも当てはまる魔法の言葉ではありません。
でも、
暮らし方や価値観を整理し、
きちんと考え、
相性を見極めた上で選ぶなら、
十分に“現実的な選択肢”だと、私は思っています。
大切なのは、
土地の広さで決めつけることでも、
不安だけで諦めることでもなく、
その土地で、どんな暮らしができそうかを
一緒に考えること。
狭小地かどうかより、
そこから始まる毎日を、
想像できるかどうか。
家づくりは、
そこからだと思っています。
tomio小山田憲央



