「マイホームは資産じゃない。負債だ」
「これからは賃貸の方が身軽でいい」
そんな言葉を、最近よく目にするようになりました。
確かに、
投資や金融の視点だけで見れば、
そう言いたくなる気持ちも分かります。
実際、賃貸の方が合理的なケースもありますし、
住まいに“正解は一つ”ではありません。
ただ、家づくりに関わる立場として、
そして実際に多くのご家族とお話をしてきた中で、
少し違う視点も大切だと感じています。
最近見かけたコラムの中に、
「マイホーム購入も立派な資産形成の一つ」という考え方がありました。
老後2,000万円問題、
なかなか現実味がなく、不安になりますよね。
毎月コツコツ貯金していても、
「本当にこれで足りるのかな…」と
感じている方も多いと思います。
そのコラムでは、
35年かけて住宅ローンを返済すること自体が、
時間を分散した“積立投資”のような考え方になる
という視点が紹介されていました。
確かに、
毎月の家賃を35年払い続けても、
手元には何も残りません。
一方で、同じような支払いを
住宅ローンに充てていれば、
最終的には「住まい」という形あるものが残ります。
売ることもできる。
貸すこともできる。
住み続けることもできる。
この選択肢が残るという点は、
マイホームならではの強みだと思います。
もちろん、
「家=必ず資産になる」と
単純に言えるわけではありません。
立地や建て方、
将来のライフスタイルによって、
価値は変わります。
だからこそ、
私たちは「投資として儲かる家」を勧めたいわけではなく、
暮らしの安心として、結果的に資産にもなり得る住まい
を一緒に考えていきたいと思っています。
「じゃあ、ずっと賃貸はダメなの?」
そんな声も聞こえてきそうですが、
決してそうではありません。
たとえば、
超富裕層であれば、
住まいを“持たない自由”を
最大限活かせるかもしれません。
でも多くの方にとって、
住まいは投資商品ではなく、
暮らしの土台です。
家賃が上がる不安。
高齢になってから借り続けられるかという不安。
老後も毎月出ていく固定費。
そうした不安を一つひとつ減らしていくという意味では、
「自分の家を持つ」という選択は、
とても現実的で、安心につながるものだと思います。
金利が上がる時代に入ったとはいえ、
住宅ローンはまだ長期で見れば低水準です。
将来の支出も見通しやすくなります。
大切なのは、
「損か得か」だけで判断するのではなく、
自分たちの人生設計の中で、どう位置づけるか。
住まいは、
お金の話だけで完結するものではありません。
マイホームは、
必ずしも“増やすための資産”ではないかもしれません。
でも、
守るための資産
安心を積み重ねるための資産
にはなり得ると、私は思っています。
これからの時代、
「貯める」「増やす」だけでなく、
「持つ」という選択肢も含めて、
自分たちらしい暮らしとお金のバランスを
考えていけたらいいですね。
最後に
家づくりは、
損得だけで決めるものではありません。
その家で、どんな時間を過ごし、
どんな安心を積み重ねていきたいのか。
そこを一緒に考えることが、
私の役割だと思っています。
tomio小山田憲央



